超長い間が開きましたけど忘れてないです、ちゃんと更新しました自分。
もはや多くは語り(れ)ません。ごめんなさいごめんなさい。
読まれる方はどうぞ……
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まばゆい光に身を包まれたキィは思わず目をつぶってしまう。それが収まったところで目を開くと、そこは久しぶりに見る風景であった。
生い茂る樹に囲まれているため辺りは薄暗く、ぽつりぽつりと並ぶ家屋は簡素な造りで本当にここはそうなのだろうかと疑ってしまうが、間違いなくここはスリーピーウッドだ。数年間景観に全く変化が無いのにはさすがに驚いてしまう。
特別な産業はないのだがしかし、ここは駆け出し冒険者のメッカのため村としての収入では困っていないと聞いた事がある。困るどころか逆に結構儲かっているようだからせめて家屋はもう少し豪華にすればいいのにとキィは思うのだが、湿度が高いのでできるだけ簡単な構造にして風通しを良くした方がいいのだろうか、とも考える。ただ単に建て直すのが面倒なだけかもしれないが。
そしてもちろん今日も冒険者で賑わっていた。
朝早くにも関わらずダンジョンの入り口へ一人で向かう者、複数で何かを話し合っている者達や、夜通し狩りでもしていたのだろうか、疲れた表情で宿に向かう者まで、村の外見で受ける印象とは異なりとにかくたくさんの者で活気に溢れている。
そういった人々とすれ違いつつ、一行は迷い無くダンジョンの入り口に向かって歩いていった。正確にはマンジがさっさと進んで行ってそれをキィと紅玉の二人が追う形だ。
「この村は昔、人が住めないような場所だったのはわかるか」
いきなりマンジがつぶやくように口を開いた。彼が自分から何かを話すのはあまり多いことではないので、キィは少し反応が遅れる。
「……ああ、そういう話を聞いたことはありますね。この辺りにもおびただしい数、そしてそれなりの強さのモンスターがうようよしていたと」
「おれも聞いたことがあるな。モンスターの侵攻に耐えられなくなった部族が手放したこの土地を、再び人々の住めるように尽くした奴がいて、名前は確か……」
紅玉が名前を思い出す前にマンジが口を挟む。
「トリスタンだ」
そう一言だけ発すると、今まで以上の速さでマンジは歩いていった。
村の外れに開いた大きな穴をくぐるとひやりとした空気が三人を撫で、そのままさらりと通り過ぎる。
「久しぶりに来たなぁ……」
キィの口から自然と言葉が出た。洞窟なので声が多少響いている。
マンジもそう思ったがそれだけで口には出さず、紅玉はキィと同じ事を言おうとしたがすんでの差で先を越されてしまったため、開けた口の行く先に困っていた。とりあえずそのままだと舌をしまい忘れた猫のように格好がつかないので、閉じて何事も無かったかのように振舞う。
中の湿度は村と変わらなく、ごつごつした岩と所々に生えている苔によっていかにもといったダンジョンらしさが伺える。この苔は大気中のマナを取り込んで光る性質を持っており、特に入ってすぐの場所は多く群生していて、暗くて先が見えないということはない。
そんな入り口付近はやはり冒険者がところどころに見えて、おぼつかない手つきでゾンビキノコやトゲきのこと戦っている。それらは初心者にとって適度な強さを持つ上わらわら出てくるので、一人前になるように腕を磨く場所として向いている。奥に進むとまた別の強敵が出てくるのだが、この辺りは危険が無い。
自分にもあんな頃があったな、とキィは懐かしみながら進んでいく。あまり手助けをするとその人の為にならないと思いつつも、通りすがりでヒールやブレスをかけてあげずにはいられない。マンジと紅玉も口には出さないものの、彼らの死角になっているモンスターを斬ったり突いたりしている。手助けしたくなる思いは同じようである。
余裕があるので、キィは二人に目を向けてみることにした。薄暗くはっきりとは確認できないが、マンジが使用しているのは間違いなく「妖刀」だ。赤く妖しくぼんやりと光るそれは通常の剣と違って片刃で癖があり、慣れていないと扱うのは難しいとされる。それを軽々と振り回しているのは相当な実力の持ち主なのだと見ることができるがしかし、どれ程なのかまではここだとよく分からない。片手剣ということは盾を装備しそうなものだが、その様子はない。昔ここで痛めたと言っていた左手はまだ治らないのだろうか。
そして紅玉。この階層のモンスターではやはり彼の相手にならないだろう。彼自身の腕と手にしているものを考えると寝ていても大丈夫そうだ。操る武器は青の刃を持つ槍、パルチザン。機関の支給品だというそれを一度は宿で見せてもらったが、実際に振り回しているとその迫力がいっそう増すように感じられた。
何より、二人の武器が描く、赤と青の軌跡は実に綺麗なものであった。
とにかく三人は調子よくずんずんと進む。奥に行くほど人影もなくなり、聞こえる音も一行の足音くらいになっていく。
少々殺伐としている場を和ませるために何か一言でも、とキィがそう考えた瞬間。
「ぐうぅぅ……」
あまりに唐突過ぎてそれが何の音なのかに気づけない。ばつが悪そうに片手を軽く上げて発言するその音の主は。
「すまん。腹減ったんだが何かないか」
紅玉である。
「そういえば朝食を口にしていませんね、何かあったと思いますけど。うーん」
キィがごそごそと荷物を探すが何も見つかりそうにない。マンジが口を挟む。
「…………もう少ししたら屋台がある。それまで我慢しろ」
ふう、と聞こえるマンジのため息にキィはわざと聞こえるように発したものだと思った。
「ごちそうさまでした!!」
そう元気良く挨拶したのはラピスであった。ランプで照らされたそのテーブルの上にはたくさんの皿に、ホットドッグの串やチキンの骨、ピザのチーズかすなどがちらほら散乱している。ラピスの足元に落ちているレタスの葉はサラダのものだろう。
ここはアリの巣中層。なぜだかここに構えられている屋台でたった今朝食を済ませたのがラピス、エル、沙希の三人組。
「おうおう、お嬢ちゃん達のように美味しそうに食べてくれるとこっちも嬉しいってもんだ。もういいのかい?」
皿を片付けながら問いかけたのは屋台の店主だ。大きなサングラスにもみあげまで伸びた豊かな髭が印象的な男性で、結構な体格をしている。この辺りのモンスターでは彼を倒せそうもない。
「やっぱりここのお料理はおいしい、ありがとうおじ様」
皿の片付けを手伝いながら礼を述べるのは沙希。その態度にあまりよそよそしさを感じさせないので、ある程度は店主と顔見知りのようだ。
「おうぃふぃはったでしゅ」
おいしかったです、と言いたかったラピスだが、ちょうどエルによって口をハンカチで拭われているところだったために聞き取れる言葉にならなかった。
「いやー、こんなむさ苦しいダンジョンで店を構えている時にこうやって可愛らしいお嬢ちゃんが訪れてくれるとね、気分も晴れやかになるってもんだからこっちが礼を言いたいよ」
「いやだわおじ様、可愛らしいだなんて。実際そうだけど照れちゃう」
沙希が口に手を当てておほほほ、と笑う。
それに合わせてはっはっは、という声とともに店主がテーブルを拭き始める。
「ところで沙希ちゃん、久しぶりだけど今日はどうしたんだい? この辺りはあまり見るようなものもないが……奥にでも行くつもりかい」
「えっと、ちょっと気になる人を追ってきたんだけど、今日はこの屋台に男の人だけの三人組は来たかしら。特に一人は超を何回つけてもいいくらいかっこいいの」
「超かっこいい男か。目の前にいるじゃないかって冗談は置いといて、今日は店を開けたとたんに沙希ちゃん達がドアでやってきたからなぁ。店の準備をしている間にも見えなかったと思うよ。……それにしてもあのスキルはいつ見ても感心するね。ダンジョンから街へ通じるドアを出すのは普通だけど、その逆は沙希ちゃんが使う以外には見たことがないよ」
「この水晶のおかげだわ。とにかくまだ来てないみたいね、マンジ様は」
テーブルを拭き終わり、布巾を片付けるために奥に引っ込もうとする店主だが、眉をしかめると顎鬚を撫でながら何かを考えながらぽつりと一言こぼす。
「マンジ……」
思い出したように沙希の方へ振り返り、何か言う前にその前に沙希が問いかける。
「あら、おじ様ご存じなの?」
「いやね、これは結構昔の話なんだけど、いつものようにここで屋台を出していたらふらふらと今にも倒れそうな様子の青年を見かけてね、おいおい危ないなと思って助けた事があったんだよ。傷はほとんどなかったのに、魂だけが抜けたような変な感じだった。名前は聞けてそれが『マンジ』だったような覚えがあってね。もう何年前の出来事だろうか……」
そう語ると店主は屋台の奥に引っ込んだ。顎に人差し指だけを引っ掛けて何かを考えるようにしている沙希へエルが話しかける。
「で、このまま三人を待つんですか? ウチは腹ごなしも兼ねてラビをこの辺でちょっと鍛えるのもよさそうなんで動きたいです」
彼女は弓の弦を何度も弾いて退屈そうだ。おもむろに立ち上がると、誰もいない方向へ数発の矢を放つ。それらはほとんど誤差もなく離れた場所にある岩へ、まるで吸い込まれるように命中していった。
エルの横に座っているラピスはというと、おなかいっぱい食べたせいか眠そうだ。うとうとしていてそのままだと間違いなく寝るだろう。というかテーブルに突っ伏している。
そんな二人の様子を見た沙希はほんの少し笑顔を見せつつ、そうね、とエルの提案に賛成した。
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次から合流ですね。メイプルでPTは6人が最高なのを思い出しました。滅多にPT組まないせいで忘れてたとかそんなことはないです。
しかしそんなこんなで次はいつになるやら。
約束はできないですけどさすがに半年放置とかはないです。
ではでは。