もう9話なのか…書きすぎ僕。
なんかこう…ごめんなさいごめんなさい。
とりあえずごめんなさい。
なにはともあれ一応書きましたので…
では第9話、読む人はどうぞ。
――――――――――――――――――――――――――
キィとラピスは事情聴取のため、保安組織「グランディオス」(カニング支部)、通称「機関」に連れて行かれた。
「グランディオス」は地域の治安維持活動や冒険者同士の争いの取り締まり活動などを行っている。ビクトリアアイランドやオシリアアイランド等の各町の代表者によって承認を受けた上での活動だ。特に街中での冒険者同士の争いは、当人同士だけではなく、周りに対する被害の甚大さも考慮され全面的に禁止となっている。街中でなくとも見つかれば捕まるのだが。
大きい灰色の建造物。無機質なその外観は「機関」らしさを存分に漂わせている。そんな建物の中に二人は連れられ、いくつもある小部屋の一室に入れられた。木で出来た長方形の机がひとつあって、椅子が何脚かあるだけの部屋。椅子に腰掛けるよう促され、指示の通りに二人は並んで座る。
しばらく待っていると一人の男が入ってきた。何色を重ねても色が変わらないような気がするほど真っ黒なコートに身を包んだ、身長のやたら高い無精髭の生えた男。年は30前後といったところだろうか。並んで座っているラピスとキィの向かいに座る。面倒そうに煙草に火をつけ、これまた面倒くさそうに質問を投げかける。
「ふー…おたくら、近所のほうから通報があったわけだけども、何をしてくれたんだ?…まァ通報者の情報によるとおたくらは一方的に危害を加えられていたようだが。これでもし争っていたらアウトだったな。で、そこのメガネの兄ちゃんは…ふらふらのようだが大丈夫か?」
「はい、一応…麻痺毒で体の自由が利きづらいですがなんとか。」
「あーそうか、気がつかず悪かったな。おい、ちょっとお前アレ持って来い。」
無精髭の男は後ろに立っている部下と思われる男に声をかける。すぐにその男は部屋を出て、3分もしないうちに手に青色の小瓶を携えて戻ってきた。大抵の体調不良は治る、万能治療薬だ。キィはそれを渡されると、礼を言いつつ一気飲みする。一息ついたキィ。痺れがだんだん取れてくる。
「んで…まだ名前を聞いてなかったな。あァ、どんな時でも人に名前を訊く時はまず自分から、だな。おれの名前は大廈紅玉(たいか・こうぎょく)だ。紅玉、とか女みたいで嫌だがせっかく親がつけてくれた名前だ、変える気はないな。さて、お嬢ちゃんから訊こうか。」
灰皿で煙草を揉み消す。
「あ…はい、ラピス、です。」
いいと言う時まで家名は出さないように、とキィから以前に注意を受けていたため自分の名前のみ答えるラピス。
「そうか…ラピスか。で、家名は?」
「ええと…」
ラピスは突っ込まれて少し慌てたのか、キィのほうへ視線をやる。
「ラピス=フォーマルです」
ラピスに視線を送られたキィがすかさず助け舟を出す。しかし、ラピスの動揺を怪しいと思ったのかどうなのか、無精髭の男―紅玉はさらに訊く。
「…ふむ、なるほど。しかし、ラピスって名前は聞いたことあるな…。昨日の新聞の片隅に『ジュエル家一家が行方不明』ってあったが…お嬢ちゃん…本当はそのジュエル家の子じゃないのか?載っていた写真と似ているような気がするぜ。」
そう言いながら、紅玉は二本目の煙草に火をつけた。
これはまずい。このまま居てラピスのことばかり訊かれたらしのげそうにない。それは避けたほうがいい…そう判断したキィは、なるべく使いたくなかった手段に出ることにした。
「…あの、そろそろ帰していただきたいのですが。」
「あァ、それはできないな。まだちゃんと事情聴取もしてないし、帰せるのは明日の昼ぐらいだ。で、メガネの兄ちゃん、お前さんの名前は?」
(それにこのお嬢ちゃん…絶対何かあるしな…)
「キィ…です。キィ=エーデルシュタイン。」
少しの間があった後、紅玉はくわえている煙草を思わず机の上に落としてしまった。
「はァ…?キィ=エーデルシュタインって…もしかして、階級『藍』のあの…『キャルセド=エーデルシュタイン』の息子さんか!?」
―「機関」には階級があり、7色で分けられている。赤、橙、黄、緑、青、藍、紫の順に偉くなっていき、そのうち階級「藍」は2番目に権力があるということになる。階級「藍」以上は別名「グランディオスマスター」と呼ばれ、「GM」と略される。ちなみに紅玉の階級は「橙」だ。その証拠に紅玉の胸元には橙色の、剣を模したバッジがつけられている。
「…はい、そうです。疑われるなら…直接的な証拠はこれしかありませんが、これで十分でしょう。」
懐から懐中時計を取り出すキィ。それは時計としての機能はとうに失われているようだ。裏面に魔法使い用の杖、ソンズの模様が刻まれている。
「しかし、なんでエーデル家の長男坊がこんなところに…。親父に怒られるんじゃないのか?」
机の上の煙草をくわえなおす。少し机が焦げている。
「色々ありまして。…それより、帰らせていただいてよろしいですか?」
「仕方ねぇか…とりあえずお前さんたちを襲ったやつについて何か情報がほしいんだが。」
「残念ながら。顔もよく見えませんでしたし…。」
「…そうか、ならいいや。もう帰っていい…が、送っていくか?」
「いえ、大丈夫です。お気遣いありがとうございます。ラピスさん、行きましょうか。」
キィは立ち上がると、ラピスの手をとり部屋を出ようとした。気持ち早足である。
「気をつけて帰れよ。」
紅玉が声をかける。
キィが返答しようとしたが、それより早くラピスが口を開く。
「紅玉さん…もお仕事、がんばってくださいね。」
ドアがぱたん、と軽く鳴って閉まった。
「機関」を出て、その帰り道。キィは考える。あの時はとっさにばれないように繕ったが、冷静に考えれば自分といるよりは「機関」に保護してもらった方がはるかに安全だろう。本当にこれでよかったのか。
「キィさん、ありがとうございました。あたし、あのままあそこにいたらばれちゃって、きっとメイプルアイランドにあるお家に帰らされるところだったと思います。あたしは、みんなが帰ってくるのをじっとお家で待つより、自分でみんなを捜したいんです。危険でも、捜し続けたい…。」
そうだ、ラピスはこういう子だった。待つことをよしとしない、そういう子。改めて気づかされるキィ。自分がやったことはこの子のためにならなかったかもしれない。が、少なくとも、この子の信念の助けにはなったのだろう。
しばらく歩くとホテルに辿り着いた。二人はそれぞれの部屋のドアの前に立ち、鍵を取り出そうとした。その時、キィがラピスに声をかける。
「ラピスさん、晩ご飯はどうします?おなかすいてます…よね?」
「うーん、そうですねぇ。おなかすいちゃいました。」
「では、たまには食べに出ましょうか。」
「え?ほんとですか?わーい、嬉しいなぁ。ありがとうございますっ。」
近くの料理店に移動した二人は、晩御飯を楽しんだ。
ラピスはエビルアイの尻尾のチリソース炒め(略してエビチリ)を食べ、キィは特性きのこラーメン(スルラのしずく、バブルリングのしずくを麺に練りこんだ三色麺)をそれぞれおいしくいただいた。
食べ終わった二人はホテルの部屋に戻り、思い思いの時間を過ごす。…が、ラピスは昼寝したとはいえまだ疲れはあったし、キィも先の件でだいぶ体力と精神力を消費し疲れていた。
二人はすぐに深い眠りに落ちる。
朝が訪れた。
先に目を覚ましたのはラピス。
(キィさんは…まだ眠ってるかな。すごく疲れてると思うから、起こしには行かないでおこうっと。…散歩にでも行こうかな。)
ラピスは簡単な身支度を済ませると、部屋を出て鍵をかけちらりと隣のキィがいる部屋を見たが見ただけで、階段を降り、ホテルの外へ出た。
季節はもう秋。月も9の後半を数えているので朝は少し肌寒い。
(うわぁ、朝のカニングシティってもやがかかるんだぁ。それとも今日だけ、かな。)
深呼吸をして、歩き出すラピス。晴れている日の朝の空気は気持ちがいい。
と、そこに人がいた。黒い髪を両側で結っている女の子。見た限りではラピスより少し年上くらいだろう。ラピスは話しかけてみることにした。
「おはようございます。何かしてるんですか?」
「あ、おはよう。…って、あなた見ない顔ね。もしかして冒険者?」
「まぁ一応そうですけど…」
「ふーん…。あなたにちょっと頼みたいことがあるんだけど、いいかな?」
――――――――――――――――――――――――――
というわけでこんな感じです。補足は…特にない、かな。
今回はあまり動きがなくてつまんなかったかもしれませんねー。まぁたぶん毎回つまらんですが。
そんな僕の小説でも、読んでいただいてありがとうございます。
感謝してもしきれません。本当にありがたいです。
読んでいただけるから、次が書けます。
ではまた次回っ