第11話。遅くなってごめんなさいごめんなさい。でもこれ更新待ってた人いるのかな…
正直、推敲ほとんどやってません。文章的に間違いがあっても今回ばかりはスルーでお願いします…
後で直しておきますから…
では、どうぞ…
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変なおじさん、もといダークロードは立ち去った。残してくれたのはラピスに力と、そして―
「あ、何か落ちてる。」
拾ってみると、「はじめてでもよくわかる盗賊」という小さい子供向けのような表紙の本だった。ご丁寧にも漢字にはルビが振ってある。
軽くぱらぱら…と読んでみる。本の最初の方には盗賊のすごさなどについて触れていて、「かっこいい!ダークロード様」コラムなどというものもあったが飛ばす。
中盤から、「初歩的な盗賊のわざ」の項があった。手裏剣編と短剣編があり、ラピスは迷わず短剣編を開く。そこにはダブルスタブという名称の技とそれを繰り出している(ように見える)写真が載っている。が、その他には特に何か書いているわけでもない。
ただ、左のページに「ここが光っていたら手の平を乗せてみよう!」という欄があった。薄く光っている…ように見える。意思が拒絶することもなく、吸い込まれるようにそこへ右の手の平を乗せるラピス。
と、一瞬、本が火をともしたばかりのランプのような光を放った。ラピスは驚いて手を離す。
(なんだろう?)
さっきまで薄く光っていた「手の平を乗せる場所」は普通の一ページになっていた。もう一度手の平を乗せてみても何も起こらない。
次のページを開くと、「ダブルスタブは素早く二回の斬撃を敵に叩き込む技だよっ。覚えたなら、短剣を装備して、集中しながら素早く二回斬るイメージでやってみよう!」などと書かれていた。
早速、腰に固定している先ほど購入したばかりの短剣の鞘から鈍く光るそれを抜き、右手のみで構えてみる。さっき店で持った時より軽く、しっくりくる…ように感じるのは気のせいだろうか。
(素早く二回斬るイメージ…)
そう考えると同時に体が動く。自分の腕なのに、信じられないぐらい、それはもう羽根のように軽かった。空気が二回、切り裂かれる音がラピスの耳に届く。これこそが、ダブルスタブである。
(す…すごーい!きゃー、ホントすごいっ)
少し跳び上がり気味に喜んでいる。
調子に乗って何回もそれを繰り出しているうち、ラピスはばてた。一瞬、集中して斬る技なので、精神的な負担もある程度かかるために連発すれば確かに疲れる。
ラピスは少し休むと、本は左の内ポケットに入れ、通路の奥へ進む。
通路を抜けると、広場に出た。カニングのここは少し前まで電車という乗り物に乗れる場所だったらしい。ここ最近、モンスターが増えすぎたため運営が困難になったということだ。古くなった時刻表や、背もたれの壊れたベンチなど、あちらこちらにその名残がある。
モンスターが増えた、という話は間違いではないようで、ラピスの目の前にはわらわらと青色版スルラが沸いている。
(た…たぶんこの子たちがバブルリングね…。たくさんいるけど、スルラみたいだからきっと大丈夫…だと思う。)
ラピスの事は気にしていないのか、バブルリング達は自由に飛んだり跳ねたりしている。とりあえず背中(?)を見せている一匹にダブルスタブで斬りつけてみた。
ぴきぃ、と鳴き声を発したが倒せてはいない。手応えはあったのだが、このバブルリングは体力がスルラよりあるようだ。いや、体力だけではない。素早さ、体当たりの攻撃力、どれを取ってもスルラより優れている。
だが、ラピスも成長していないわけではない。ダークロードによって盗賊に転職し、その能力は才能も合間って飛躍的に伸びたのである。ひけをとらない。
そして一匹、倒した。
(やったぁ!)
倒したあと、ビー玉に紐をつけたような物体が落ちていた。周りのバブルリングに気をつけつつ拾う。
(これが…「バブルリングのしずく」かなぁ?とりあえず左のポーチに入れておこうっと。この調子でどんどんいこーっ)
たくさんのバブルリングの中、ラピスは快刀乱麻の活躍を見せた。ばたばたと倒れていく青い物体。最初の頃は。
―いくら才能があっても、決して補えないものがひとつだけ、ある。
それは「経験」だ。
ラピスにはそれが圧倒的に足りない。ペース配分を考えず、とばすだけとばしたラピスの顔は疲労の色が濃くなってくる。
それに、いつもキィが側にいてヒールをかけてくれたので、「回復薬」を用意することすらラピスの頭にはなかった。精神力を使う技も今までに使用したことがないため、その薬もない。一人で狩りをするには何もかもが足りなかった。
つまり、今ラピスは相当なピンチに立たされている。たくさんのバブルリングに囲まれ、非常に旗色が悪い。
(なんであたしはこう、ピンチに立たされるのー。もーいやっ。)
ラピスは壁を背にし、肩で息をし、しかしまだ目は闘う意思を持っている。短剣は離さない。バブルリング達は飛んだり跳ねたりしながらじりじりと近寄ってくる。次に向こうの攻撃が直撃したら、危ない。
もう、すごい勢いで駆け抜けて逃げようかとも思った、その時。
「耳ふさいで伏せて!!」
誰かの声がした。ラピスはとっさに耳をふさぎながら体を地に伏せる。その直後、耳をつんざくような爆発音と地を揺らすような衝撃がラピスのすぐ側で起こった。
煙があがり、それが晴れたころ、ラピスは辺りを見回した。ラピスに襲いかかろうとしていたバブルリングはきれいさっぱりいなくなっている。
「ラピス、大丈夫か?しっかしお前、よくピンチになるのかねぇ。ウチが助けるのはこれで二度目か…。まぁ、一度目は気を失ってたっけな。」
ラピスの元に近付いてくるその声の主は金髪で、白い衛生眼帯をしていて、赤い弓を持っている女の人。…そう、ラピスはその人物を覚えている。
「エルさん!」
「よお。で、何してるんだ?こんなところで。」
「実は…」
ことのあらましをエルに説明するラピス。
「なるほどねぇ…。バブルリングのしずく、か。ん、そういや緑きのこの傘ならたくさん持ってるぞ?」
エルは担いでいる袋の中をラピスに見せる。椎茸ほどの大きさの緑色の傘がたくさん入っている。
「どうしたんですか?これ…」
あぜんとしながら質問するラピス。
「あーこれさ、『緑きのこの傘の肉づめ』をキィの奴に作ってもらおうと思ってね。カニング行く前にヘネシスで狩っといた。たくさんあるから50ぐらいはやるよ。」
けろりと答えるエル。
「えぇ…いいんですか?」
「気にすんな気にすんな。ちょっと多かったかなとも思っていたし、有効に使えればそれでいいさ。」
黒色の手袋をはめた手を軽くひらりとさせながら、少し照れくさそうにする。
「危ないところも助けていただきましたし、傘まで…。本当にありがとうございますっ!」
深々とお辞儀する。
「だから礼はいいって。」
やっぱり照れくさそうだ。
「…あ、そういえばヘネシスからどうやってここに…?しかもあたしのとこに。なにか超能力でも使ったんですか?」
「いや…そのな、さっきキィに通信機で居場所聞いたらカニングだって言うし、ラピスはたぶん地下鉄だから来るならこっそり見てきてほしいとか言われて。そこで持っていたカニング行きの帰還の書を使ったわけだ。それ使うとすぐその街まで行ける。滅多に手に入らないけどな。」
「そんな貴重な品をよく使おうと思いましたね…」
「まぁ、使わないと『包みの持ち腐れ』だからなー。…それにしてもラピス、お前雰囲気変わったな…。転職でもしたのか?武器から察するに…盗賊か。」
ラピスの全身を見たあと、最後に目を見るエル。
「あ、わかります?」
「そりゃ、ね…。で、バブルリングのしずくはどうする?手伝うか?」
その言葉にラピスは首を横に振る。
「いえ、しずくぐらいはあたしが全部集めてみせます!エルさんはそこで見てるだけでいいですからっ」
まぁこれぐらいは、ということでエルから薬をもらったラピスは破竹の勢いでバブルリングを倒していく。
そして、ようやくしずくも集まった。
もう太陽はかなり高い位置まで昇っている。もう昼なのだろうか。あっという間だ。ラピスはそんなことを考えながら、依頼をくれたネーラの元へ早足で向かう。エルはその後ろをついてくる。
朝と同じ場所にネーラは座っていた。
「ネーラさーん。」
ラピスは近付きながら話しかける。
「あら、早かったね。もう集まったの?」
ラピスの顔を見るや、少し意外そうな顔をするネーラ。
「はい、これ防具屋さんに渡してください。」
そう言ってラピスがネーラに差し出した袋にはバブルリングのしずくと緑きのこの傘が依頼された数だけ入っていた。
ネーラは中身を確かめると、
「うん、確かに受け取ったわ。…じゃあこれ報酬。先に受け取っていたんだ。これ、栽培してるのがたくさんなったから、だって。」
そう言いながら袋をラピスに渡す。
その袋を開けて中身を見てみると…黄色い物体がぎっしりと詰まっていた。
「レ、レモンですか…」
「うん、レモン。また何かあったらお願いするね!」
ラピスは依頼を無事に終わらせる事ができた大きな安心感と、報酬が何の変哲もないレモンだった少しの脱力感に襲われた。
キィが待つホテルへとラピスとエルは足を進める。雑談をしながらだったので、すぐ着いた。
ラピスはキィの部屋をノックする。すぐに出るキィ。二人を部屋の中へ通しつつ、話をする。
「ただいまー、キィさん!」
「よー、キィ。」
「ラピスさん、おかえりなさい。…なにかありましたね。エルさん、またよろしくお願いします…ですかね。」
「キィさん、実はちょっと…」
「…そうですか、そんなことが。転職、したんですね。バブルリングはよくひとりで頑張りました。報酬はレモンだったんですか…。」
「そうそうキィ、緑きのこの傘たくさん持ってきたから、また肉詰め作ってくれ。あれは美味い。」
「では…こちらのホテルの厨房をお借りしましょうか。ラピスさんの転職祝いも兼ねて、腕をふるって作りますね。詳しい話は食事をしながらでも。せっかくですし、レモンも使いましょう。」
「うわーい!」
ラピスとエルの声がハモる。
その日の昼食は、エルの希望通り緑きのこの傘の肉詰めがメインで、そしてデザートはレモンタルトだった。
ラピスにとって、そのレモンタルトは本当に、本当に美味しかった。
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ど、どうでしたでしょうか…
レモンタルトって時間かかるっけか…
まぁ、あまり時間がかかるなら…昼御飯を食べながら作ったということで(なげやり
次回からエルも一行に加わります…
生暖かい目で見ていただければ幸いです。
ではまた次回っ